[soudan 07134] 娘の住宅ローンを負担していた場合の贈与税の納税義務について
2024年12月03日

税務相互相談会の皆さん

下記について教えて下さい。


【税  目】


相続税・贈与含む(井上幹康税理士),国際税務<所得税/相続・贈与税>(金田一喜代美税理士)


【対象顧客】


個人


【前  提】


・娘(日本国籍あり)、母親ともに10年超米国に居住している。

 但し、娘の住民票は、日本国内のままとなっており、

 マイナンバーも取得している。

・娘は過去10年以内に日本国内で勤務していたことがある。

 ただし、その勤務期間は1年以内である(勤務予定は1年以上

 で あったが、結果的に1年内に、米国へ戻ることになった)。

・娘は日本国内に家屋を有し、その住宅ローンを母親が支払っている

 (過去に結婚した際に取得したものであるが、離婚したことにより、

 米国へ戻り、現在誰も居住していない)。

・母親は、国外転出時課税の納税猶予の特例は受けていない。


【質  問】


(1)上記前提の場合、娘は非居住制限納税義務者となり、

母親の円預金口座から直接ローンの引落しをしていれば、

娘は法施行地にある財産を取得したことにはならず、

母親からの当該贈与について、(日本の)贈与税の納税義務者

とはならないという解釈で良いでしょうか?

(2)仮に娘の国内にある円預金口座へ母親が自身の国内にある

円預金口座から振り込む形で実質的に住宅ローンを負担していると、

財産の所在が国内にあるとなるため、娘は母親からの贈与(現金贈与)

について、(日本の)贈与税の納税義務を負うことになる

という解釈であっていますでしょうか。

先生のご見解をお聞かせください。


(以下、私見です。)

(1)については、まず、娘が非居住制限納税義務者に

該当するか否かの検討が必要になると思います。

娘の住所ですが、住民票を日本に置き、マイナンバーを

取得していても(そういうことが法律上可能なのかは存じ上げませんが)、

相基通1の3・1の4共-5において、住所は、生活の本拠で判断する

としており、また、同一人が同時に2か所以上の住所を有することは

ないものとするとしていますので、米国にずっと居住しているのならば、

娘の住所は米国にあると思います。次に1年以内に日本国内で

勤務していたことが「国内に住所を有していたことがある」と言えるか

ですが、相基通1の3・1の4共-6(2)の文言を元々の居住は米国にあり、

日本への勤務が1年以内であった場合に置き換えると、その者の住所は

米国にあったと主張することもできるような気がしております。

娘が日本国籍を有している点で、上記通達とは異なりますが、

逐条解説にて、その趣旨を「所得税法においては、国内又は国外に

居住することになった者が、それぞれ国内又は国外で継続して

1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合には、

その者はそれぞれ国内又は国外に住所を有する者と推定されている

(所令14、15)こととの整合性を考慮するとともに、

このような場合には、通常、国内に生活の本拠地と認められる場所が

残されていることが多いであろうと考えられるからである」としているため、

結果的に1年以内になった場合は難しいかもしれませんが、全く主張が

通らないということもないかとは思われます。この主張が通るならば、

娘、母親共に米国に10年超国外に居住していることになりますから、

母親から、国内財産を取得しなければ、贈与税の納税義務はない

ということになります。最後に贈与を受けた財産の所在ですが、

母親の円預金口座から直接ローンの引き落としをしているのであれば、

娘への経済的利益の供与(相法9)となり、その財産の所在は、

相法10①各号のいずれにも該当せず、相法10③により、贈与者の

住所の所在によることになる、従って国外財産を娘は取得したことになり、

贈与税の納税義務は発生しない(贈与税の納税義務者とならない)

という結論になるような気がしております。

(2)の場合は、娘が非居住制限納税義務者になることを前提とすると、

母親の日本の円預金口座から娘の口座に振り込むと、

国内財産(相法10四)を贈与したことになり、娘は贈与税の

納税義務が発生することになるように思います。


【参考条文・通達・URL等】


相続税法1条の4第1項4号(贈与税の納税義務者)

同法9条(みなし贈与・相続課税)

同法10条1項、3項(財産の所在)

相基通1の3・1の4共-5(「住所」の意義)

相基通1の3・1の4共-6(2)(国外勤務者等の住所の判定)

令和6年版相続税逐条解説 大蔵財務協会 16-18頁

国税庁 タックスアンサー No.4432受贈者が外国に居住しているとき




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