税務相互相談会の皆さん、こんにちは。
【税目】所得税<譲渡所得>(石田一弘税理士)
【対象顧客】法人
【前提】
非上場の株式会社で、普通株式とA種優先株式を発行しています。
A種優先株式の内容は次のとおりです。
• 剰余金の配当 普通株主に先立ち、1株につき払込金額に一定率を乗じた額を支払う。
非累積で、支払われなかった年の不足額は翌年以降に繰り越さない
• 残余財産の分配 普通株主に先立ち、1株につき払込金額と同額を支払う
• 上記の優先配当・優先分配を受けた後、なお残余があるときは、
普通株式と同順位で分配にも参加する(参加型)
• 議決権 制限なし。普通株式と同じ
• 譲渡制限 普通株式と同じ
• 取得請求権 いつでも普通株式への転換を請求できる
• 事業の全部または実質的に全部を第三者に移転した場合には、
金銭による買取りを請求できる
参加型であるため、A種優先株式はどの局面でも
普通株式より有利な内容になっています。
株式の分割・併合はなく、転換価額を引き下げる事由も生じていないため、
転換によって交付される普通株式の数は転換前のA種優先株式の数と同じです。
端数も生じません。転換の前後で発行済株式の総数と議決権の総数は変わりません。
A種優先株式はもともと外部の事業会社が引き受けたものですが、
その後、居住者である代表者が個人でその全部を買い取りました。
現在は代表者が発行済株式のほとんどを保有し、
少数株主として代表者の親族、国外に居住する個人、資本関係のない法人が残っています。
会社は設立以来赤字で、配当を行ったことがありません。
純資産はプラスですが、剰余金の額はごくわずかで、当面配当を行う見込みもありません。
次回の資金調達に備えて資本構成を整理するため、
代表者が取得請求権を行使し、保有するA種優先株式の全部を
普通株式に転換することを検討しています。
会社が交付するのは普通株式のみで、金銭その他の資産の交付はありません。
参加型の優先権を対価なく手放すことになるため、
経済実質としては代表者から残る少数株主へ価値が移ると考えられます。
この点の贈与税の取扱いは、別途お尋ねしています。
【質 問】
1.課税繰延べの適用
• 考え方①
所得税法57条の4第3項1号(取得請求権付株式の請求権の行使により、
対価として株式のみが交付される場合)により譲渡がなかったものとみなされ、
あわせて所得税法25条1項5号のかっこ書によりみなし配当も生じない。
• 考え方②
同項かっこ書の「おおむね同額となっていない場合」に当たるため適用されず、
自己株式の取得として課税される。
2.かっこ書の「価額」の測り方
同項かっこ書は「交付を受けた株式の価額が譲渡をした有価証券の価額と
おおむね同額となつていないと認められる場合」を除いています。
本件は参加型の優先権を対価なく手放すものですから、
経済実質では手放す株式のほうが価値が高いことになります。
• 考え方①
取引相場のない株式なので、所得税基本通達59-6に準じて
財産評価基本通達により算定する。この場合、通達上はA種優先株式と
普通株式の1株当たりの評価額が一致するため、おおむね同額の要件を満たす。
• 考え方②
所得税基本通達59-6は文言上、所得税法59条1項の適用に関する
定めであり57条の4には及ばないため、経済実質に即した時価
(DCF、直近の第三者割当の払込金額、第三者評価機関の算定など)により判定する。
この場合、参加型の優先権の分だけ差が出るため、
おおむね同額の要件を満たさない可能性がある。
• 考え方③
条文が想定しているのは、あらかじめ株式の内容として定められた
取得条件に従った転換であれば当然におおむね同額を満たすという趣旨であり、
個別の時価比較までは求められていない。
3.適用がない場合の計算
おおむね同額に当たらないとされた場合、自己株式の取得として、
みなし配当と株式等に係る譲渡損益が生じることになると考えます。
交付される普通株式の価額について
• 考え方① 所得税基本通達59-6に準じ、財産評価基本通達により算定する。
• 考え方② 直近の第三者割当増資の払込金額による。
• 考え方③ 第三者評価機関の算定による。
対応する資本金等の額について
• 考え方①
種類株式を発行している会社なので、A種優先株式に係る種類資本金額による。
• 考え方②
種類を区別せず、発行済株式数で按分する。
4.転換後の普通株式の取得費
代表者は、このA種優先株式を外部の事業会社から買い取っています。
買取りが時価より低い価額で行われ、その差額について経済的利益として
課税を受けていた場合、取得費はいかがでしょうか。
• 考え方① 実際の支払額をそのまま引き継ぐ。
• 考え方② 課税された経済的利益を加算した額(取得時の時価)を取得費とする。
また、普通株式とA種優先株式を一括の価額で買い取っていた場合、
種類ごとの取得価額の配分はいかがでしょうか。
• 考え方① 取得時のそれぞれの時価の比で按分する。
• 考え方② 契約書に種類別の内訳があればそれによる。
• 考え方③ それぞれの払込金額の比で按分する。
5.定款変更による方法との比較
上記の所得税の論点を避ける方法として、取得請求権を行使するのではなく、
定款を変更してA種優先株式の内容を普通株式と同じにする
(またはA種優先株式を廃止する)方法も考えられます。
• 考え方① 自己株式の取得を経ないため、所得税法57条の4・25条の問題は生じない。
• 考え方② 株式の内容の変更であっても、実質的に旧株式の譲渡と新株式の取得があったものとして課税される余地がある。
【参考条文・通達・URL等】
所得税法57条の4第3項1号・25条1項5号・59条1項/所得税基本通達59-6/法人税法61条の2第14項/財産評価基本通達178〜189-7
質問に対する回答部分を閲覧できるのは
税務相互相談会会員限定となっています。
※ご入会日以降に本会へ新規投稿された質問・回答が閲覧できます
税務相互相談会では、月に何度でも
プロフェッショナルに税務実務の質問・相談が可能です。
税務相互相談会にご入会の上
ぜひ、ご質問を投稿してみてください!

